ご無沙汰でございます。かろうじて生きています。
5年に一度の居酒屋談義。当たるどうかよりも、インパクト重視で。


【十九大 中央政治局常務委員予測】

  • 序列   氏名(年齢) 予想される職掌
  • 序列1位 習近平(64)  党総書記・国家主席党中央軍事委員会主席
  • 序列2位 李克強(62) 全人代委員長
  • 序列3位 汪洋(62)  国務院総理
  • 序列4位 韓正(63)  政治協商会議主席
  • 序列5位 栗戦書(67) 党規律検査委員会書記


5年前の十八大の結果を受けて習近平を「江沢民と曽慶紅に押さえられて大したことできない」とdisった反省から、、、ではありませんが、常務委員経験者(周永康)の逮捕という誰もしたことがない荒業を成し遂げ、汚職撲滅で権力基盤を盤石なまでに整えたことを素直に評価し、十九大は「習近平大勝利」と予測します。


【ポイント1:常務委員5人への減員と、習近平三期目の布石】
常務委員を7人から5人へと減員しました。この理由は習近平の権限強化やスムーズな合意形成に加え、「後継者指名が不要」、すなわち習近平が二十大でも総書記を務めるための布石と見立ててます。
憲法で規定されているのは「国家主席の任期は2期10年まで」のみ。任期が明記されていない総書記と中央軍事委員会主席は、賛同さえあれば継続して務めることが可能です。それを前提に、内規としてある「常務委員の68歳定年制」を変更もしくは撤廃しさえすれば、晴れて常務委員に残りつつ総書記三期目が可能になるわけです。


また、北京市党書記の蔡奇(61)、そして上海市長の応勇(59)と大都市のトップに過去の部下を送り込んでおり、ともに次の二十大で常務委員に昇格する可能性大です。こういった重要都市に自分の部下を送り込めているあたり、習近平(総書記)ー栗戦書(中央弁公庁主任)ー趙楽際(党組織部長)という党人事を司る中軸のラインが、前任の胡錦濤ー令計画ー李源潮に比べて遥かに強力に機能している証左でもあります。


さらには、習近平はこの5年汚職撲滅に力を注いだ結果、胡錦濤の団派のような後継者を育成するだけの時間が与えられていません。失脚した孫政才の代わりに、浙江省時代の部下であった陳敏爾(57)が重慶市党書記になって一躍後継者候補として注目されていますが、これはどちらかというと胡春華(54)の当て馬というか、内部調整の結果後継者指名をせざるを得ない状況になった時の保険でしょう。陳敏爾は何せ顔が…(笑)。「ハゲと白髪はトップになれない」論と同様、外見って大きな要素だと思うんですよね。
そういうことで、習近平の3期目への布石は着々と進んでいるように見受けられますので、後継者は二十大までお預け。胡春華・陳敏爾だけでなく、十九大以降の人事で抜擢される40代から50代の人物にも注目です。


【ポイント2:サヨナラ李克強、こんにちは汪洋】
総理から全人代委員長にスライドするのは李鵬の例があるとはいえ、現在の状況からするとちょっと無理筋なのは承知の上。ここで注目したいのは李克強よりも、むしろ汪洋の方です。


現在は国務院第3副総理である汪洋。主管である通商・農業部門以外にもここ数ヶ月急速に(特に外交面で)存在感を増しています。インドと国境問題で対立するなか、8月に開かれたパキスタン独立70周年記念式典には汪洋が派遣されています。パキスタンは同じくインドと緊張状態が続いている国ですので、これは明らかに外交マターの派遣。元から常務委員への昇格が確実視されていることに加え、この5年全然存在感を示せておらず顔色も悪くなる一方の李克強の代わりを務めるんじゃ…?という噂は、決して故なき邪推ではないと考えています。


また、今年62歳である汪洋は、次回二十大でも常務委員留任が可能な年齢です。その彼が今回で全人代委員長や政協主席といった実質「上がりポスト」に就くのも、王岐山が引退すると辣腕型がいなくなる習近平にとっては勿体ないかと。
「汪洋って団派じゃないの?」とよくご存知の方なら思うでしょうが、彼はもともと安徽省の田舎市長時代に訒小平によって引き立てられて胡錦濤の手下となった、いわば「最後の訒小平人事」と解釈しています。つまり、李克強胡春華といった共青団書記経験者に比べると団派色(胡錦濤およびその腹心に引き立てられた筋)は強くありません。ですのでこの5年の中央仕えで習近平の信任を勝ち得て、常務委員への昇格を確実なものとしたと見ています。


【ポイント3:王岐山は引退、定年制の変更は”今回は”なし】
習近平政権の立役者である王岐山の名前がありませんが、すでに退任するという報道が各所から出ていることに加え、王岐山の処遇で注目されている常務委員定年制(68歳以上は引退)の変更も前述の通り、本来の狙いは次回二十大で習近平自身の総書記三期目にあるわけですから、ここは本人の希望通り定年引退が濃厚とみています。王岐山が留任でもすれば、その意味は「定年の内規をここで崩してまでも王岐山の力に頼らざるを得ない=習近平の権力は万全ではない」という見立てが成立するかと。


王岐山の後任ですが、この5年で党の中枢を経験させた盟友・栗戦書に委ねられるのでしょう。ここも「王岐山はいない方が習近平はやりやすい」と判断しています。


【その他】
最後に、他の候補者の寸評を。
長らく後継者候補と目されていた胡春華(54)はかろうじて生き残っていますが、10年前の李克強同様、そのまま後継者指名とはならないのではないでしょうか。おそらくは前任者である汪洋と同じく広東省書記から国務院副総理に転出し、さらに緊張ある5年間を過ごすことになるのでしょう。


党組織部長の要職を務めている趙楽際(60)ですが、本来なら常務委員に昇格してもおかしくないポジションです。しかし前述の通り習近平が3期目を見据えて後継者候補の育成に本腰を入れるとすれば、組織部長というポジションはこの上なく重要。ひょっとしたらしばらくは留任もあるかもと見ています。


最後に、リストに入れた韓正(63)を。この人は入党以来40年間上海一筋で地方経験もなしという特異な経歴から、当地を金城湯池としていた「ずぶずぶの江沢民派」とされています。一方で上海の共青団書記を経て当時の最年少で上海市長を務め、かつ江沢民派の”プリンス”陳良宇の失脚後に党書記代理を務めた経緯から「団派」と目されることもあり、さらには上海党委書記になった習近平の元で短期間ですがコンビを組んだこともあり「習近平も認めている」ともされる、いかにも派閥色が入り混じった人物です。よっぽど有能なのか、誰かの覚えめでたいのかのどちらかでしょう。上海市党委書記は次の常務委員昇格がほぼ約束されたポジションですので、前任者の兪正声・政治協商会議主席同様、昇格となるのでしょう。



以上、当たればでかい万馬券、ということでご笑覧いただければ。