【2012年18期党大会人事予想ー個別寸評②&まとめ編】

都合3回にわたってしまった無責任予想も今回で最後です。一応参考までに、候補者たちのリストを出しておきます。

《68歳未満の中央政治局委員(12年時点での年齢)》 
 姓名    現職(前職)
習近平(59) 国家副主席他(上海市党書記)
李克強(57) 国務院第一副総理(遼寧省党書記)
(すでに中央政治局常務委員)
劉延東(67) 国務院第一国務委員(党統一戦線部長)
薄煕来(63) 重慶市党書記(国務院商務部長)
張高麗(66) 天津市党書記(山東省党書記)
王岐山(64) 国務院第四副総理(北京市長)
劉雲山(65) 党宣伝部長(党宣伝部副部長)
張徳江(66) 国務院第三副総理(広東省党書記)
兪正声(67) 上海市党書記(湖北省党書記)
(ただし1期5年で定年引退)
汪洋(57) 広東省党書記(重慶市党書記)
李源潮(62) 党組織部長(江蘇省党書記)
(2期10年可能)


《色々と個性的な方々》
 残る4人は、今回の昇格を逃しても中央政治局には留まることができる人たち。しかしながら次回19大には68歳以上という年齢制限にかかるため、これ以上の昇進は望めません。よって熾烈なアピール合戦を繰り広げている人たちでもあります。順当にいけばこの中から2名が常務委員入り、2名が脱落します。来年まで一番ウォッチが楽しい方々ですね。


◎薄煕来(63) 重慶市党委書記(国務院商務部長)   
 最近紅さがやたらと鼻につく(笑)人気者。薄煕来は正直評価が難しいです。元老・薄一波の息子という血統の良さもあり内外からの注目度は大変高いのですが、2007年・17大段階の評価では明らかに汪洋の後塵を拝していました。

 そんな彼が重慶着任後、「打黒、唱紅」という極端な公安活動・思想活動を繰り広げます。一面的には汪洋の上を行くための実績作りとアピール活動とみられていましたが、今や他の政治家を巻き込んで一大ムーヴメント状態。既に常務委員のうち5名(呉邦国習近平李長春賀国強周永康)が重慶入りして、「打黒、唱紅」活動を賞賛しています。最近の官製メディアでの取り上げられ方や人事バランスから考えると、常務委員入りはほぼ間違いないというのが基本線です。

 あとは汪洋を追い越し、また唱紅活動を「文革の残滓」と批判したムービースタア・温家宝の圧力を躱して、見事序列上位に食い込めるか?次回人事で最も注目すべきポイントだと思います。気になっているのは呉邦国が「打黒・唱紅」活動を2回も現地入りして賞賛するなど、ケツ持ちに名乗りを挙げているご様子ですので、見事成功すれば彼の後任として全人代委員長まであるかも知れません。


王岐山(64) 国務院第四副総理(北京市長)
 中国金融政策のエースとして、また建設銀行行長時の広東金融危機や北京・SARSの時に事態を収束させたことから「消防士」という異名を付けられたほど鉄火場に強い人物。姚依林の女婿という太子党の系譜に連なるので、長老の受けもよろしいようです。キャリアの最初が陝西歴史博物館というのも個人的に好感度高し。

 実績は申し分なく、外国(特にアメリカ)からの評価も厚いことから、次回人事での昇格は濃厚。李克強の補佐として筆頭副総理に就任し、中国経済政策の中心人物となると思われます。


劉延東(67) 国務院第一国務委員(党統一戦線部長)
 女性政治家として「中国版鉄の女」呉儀(元副首相)に比され、初の女性常務委員となるかが注目される人物。早くから共青団の活動で注目されており、統一戦線部長として党中央の職務経歴も長い。胡錦濤の腹心として次期党大会での処遇が注目されますが、いかんせん現在の職位が低いのが辛いです。前回大会でも上海党委書記という噂がありましたが、結局は上海閥の牙城を崩すには至りませんでした。

 国務委員から常務委員入りした羅幹の例があるので昇格の目がないとは思いませんが、他のライバルとの兼ね合いから、このままでは呉儀を超えることは難しいと思われます。もし胡錦濤の強健が発動されて常務委員入りが叶ったら、統一戦線部や文教関係の国務委員という職掌から、政治協商会議主席が適任でしょうか。


張高麗(66) 天津市党書記(山東省党書記)
 天津いえば「元祖ガテン系政治家」李瑞環の地盤にして、ムービースタアの影響力が強いといわれている地域。元々は「石油閥」として江沢民に近いと言われた張高麗ですが、石油公司勤務時代は共青党に所属していたり、陳良宇失脚に及んで胡錦濤に忠誠を誓ったと噂されていたりと、派閥横断型であることがわかります。玉虫色タイプの政治家は他に張徳江など大物もいるため、次回人事では後回しにされる公算が高いように思えます。頼みの綱は「石油閥」「天津」という共通項を持つムービースタア。張高麗が常務委員に入るような事態になれば、俄然ムービースタアが影響力を持ったという証になります。


ということで、ひとまずこんな感じで予想がまとまりました。
《18期中央政治局常務委員予想》
習近平・汪洋・李克強李源潮張徳江兪正声劉雲山・薄煕来・王岐山

まんま矢吹先生予想じゃないですか(笑)。


《序列&ポスト予想》
 習近平李克強が第1位と第3位で確定。安定政権の基盤として、上位序列である全人代委員長と政協会議主席には2期10年務められる汪洋と李源潮が入る公算が高いです。問題は国家副主席ですね。胡錦濤1期目に曾慶紅が入った事例から、派閥内バランスとして国家主席習近平とは別派閥の人物が入ると思われるので、曾慶紅のラインが消えます。一方で明確な「団派」もいない。ひとまずここは消去法で風見鶏的な存在の張徳江にしておきましょう。「団派も上海閥もみんな太子党や!」って論理でもし万が一でも薄煕来が国家副主席に入っちゃったら、「紅いキングメーカー」の誕生です。


 現在務めている職掌上、筆頭副首相は王岐山、宣伝担当に劉雲山をおきます。中央規律検査委員会書記ですが、尉建行や呉官正がやっていた時は権力闘争の超重要ポストいう認識がありましたが、今の賀国強が務められるのなら誰がやっても同じだろう(笑)ということで兪正声を置きます。ちなみに個人的には李源潮が適任かと思ってますが。最後9位の公安担当に、紅い紅い薄煕来が仮面ライダーV3よろしく来て、いいオチがついたということで。。。


《2012年18期中央政治局常務委員予想》
序列第1位 習近平(59) 国家主席
序列第2位 汪 洋(57) 全人代常務委員長
序列第3位 李克強(57) 国務院総理
序列第4位 李源潮(62) 政治協商会議主席
序列第5位 張徳江(66) 国家副主席
序列第6位 王岐山(64) 国務院副総理
序列第7位 兪正声(67) 中央規律検査院書記
序列第8位 劉雲山(67) 精神文明建設指導委員会書記(宣伝思想担当)
序列第9位 薄煕来(63) 政法委員会書記(公安担当)


 これが一応、「蓋然性が高い」予想になりますが、ウオッチ的にはひとひねり加えたい所です。加えるとしたら当然、一大ムーブメントの主役・薄煕来のポストになります。最近の彼の行動は「猟官パフォーマンス」では片付けられない、薄ら寒いものを感じます。重慶衛視の「紅色頻道」なんて何の冗談だか。温家宝が出張らざるを得ないというのも、事態の深刻さを表しています。そんな薄煕来が大出世する可能性は大いにある訳で、そうなるとこんな感じになるのかな、というのが「予想その2」です。


《2012年18期中央政治局常務委員予想 その2》
序列第1位 習近平(59) 国家主席
序列第2位 薄煕来(63) 全人代常務委員長
序列第3位 李克強(57) 国務院総理
序列第4位 劉延東(67) 政治協商会議主席
序列第5位 張徳江(66) 国家副主席
序列第6位 王岐山(64) 国務院副総理
序列第7位 李源潮(62) 中央規律検査院書記
序列第8位 劉雲山(67) 精神文明建設指導委員会書記(宣伝思想担当)
序列第9位 兪正声(67) 政法委員会書記(公安担当)


うーん、汪洋が失脚してしまいました(笑)。とはいえ彼は今回の昇進を逃しても次から2期10年務められるので、胡錦涛の妥協人事にはとっても使いやすいカードなのも確か。ここは捲土重来を期して、党中央の要職でもしてもらいましょう。


 最後にもうひとつグダグダを。上記予想と胡錦濤1期目の人事と比べてみて下さい。明らかに年齢バランスが異なるということにお気付きでしょうか?

《2002年・16大人事 年齢は2002年当時》
胡錦涛(60)・呉邦国(61)・温家宝(60)・賈慶林(62)・曾慶紅(63)・黄菊(64)・李長春(58)・羅幹(67)


 そう、60〜70歳が領導の中核年齢層であるにも関わらず、今回は60代前半が少ないのです。今回の60代前半というと、1966年から始まる「紅衛兵」運動の時に、18歳前後であったということ。実際、中央政治局でこの年齢に該当する薄煕来・李源潮王岐山はみんな、元・紅衛兵と言われています。
 別に日本でもゲバ棒持ってた人が政治家になったり読売新聞のトップを務めていたりしているので、経歴自体を批判するつもりは毛頭ありません。改めて紅衛兵世代(文革世代とまでは言えない)がロスジェネ的扱いを受けていることを感じるとともに、元・首都紅衛兵聯合行動委員会(聯動)の薄煕来が押し進める「唱紅」というのが、底なし沼のように不気味に感じるのです。


 とまあ、こういった予想を基本線にして今後の動きをウォッチして行きたいと思っています。長らくおつきあい頂きありがとうございました。


【本日のムービースタア】
北京市朝陽区の小学校にて学生とバスケに勤しむムービースタア。

「ソー エイ オゥ エイ!」


「ダムダムダム『もっと腰を低く!』」


「ボールは、、、リングに、、置いてくる!!」

ちなみに同行していたのはマネージャーの赤木晴子、、ではなく元朝陽区長の劉延東(笑)。


【ほな解放日報も解散や】
中国人民解放軍が、インターネット上の「出会い系サイト」利用を禁じる通達を出した模様。理由は「軍人の家庭幸福や心身の健康にも影響があるため」。他にも婚活サイトや転職サイト、個人ブログの開設も禁じたらしい。